東京御廟 町屋光明寺

コラム

第6回 東京と地方、ふたつのお盆

お盆の時期が近づいてまいりました。帰省してお墓参りをしようと思っている方はたくさんいるのではないでしょうか。

全国的には8月15日にお盆を行う地域がほとんどですが、東京や横浜などでは7月15日に行われています。ただ、最近は東京で暮らしていても、7月15日がお盆だと知らない若い人は意外と多いようです。

伝統的にお盆は、7月15日でした。しかし、明治のはじめ(1873年)に新暦が採用されたのをきっかけに8月15日に行われるようになったのです。東京で亡くなった家族を7月に供養し、8月に田舎で先祖代々の墓参り――。東京には、そのような形で毎年のお盆を過ごす方が大勢います。

地方出身の方々たちのふるさとへの思いが、旧暦にお盆を行うという東京の慣習を定着させたのかもしれません。お盆は、亡くなった人が黄泉の国から現世に里帰りする日です。

お盆の入りの日である8月13日(新暦)ころにお墓参りをして亡き方をお迎えし、一緒にご自宅に帰っていただき、ご仏壇や祭壇で過ごしていただく。そして、お盆が過ぎたら、もう一度、お墓にお送りして黄泉の国にお戻りいただく……。

ご先祖の魂をお迎えし、お送りする行事は、お墓参りだけではありません。日本各地に様々なお盆の慣習が伝わり、現在も行われています。本来、盆踊りはお盆に里帰りする精霊をお迎えして、送り出すための風習でした。

また、お盆の入りの日の夕方に焚く迎え火は、亡き方の魂を現世に迎え入れるための儀式ですし、お盆の終わりの送り火は黄泉の国に送り出すために燃やします。長崎県や佐賀県に伝わる精霊流しも同様に故人を黄泉の国に送る行事です。もともと7月15日に行われていた亡き方を供養する仏事だった盂蘭盆(うらぼん)が、日本に伝わったあと、様々な習俗や風習と合わさって現在のような形として私たちの生活に息づいているのです。

取材・構成/山川徹

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